新型コロナ第3波の不安、臨床研究が始まった回復者血漿療法とは――研究が進む韓国の現状を知る
2020年 11月 16日(月曜日) 19:59
11月11日午後、日本医師会の中川俊男会長が現在の新型コロナ感染拡大状況を「第3波と言ってもいい」と述べた。10月末に英ウォーリック大学のティモ・フェッツァー教授が発表した調査結果を鑑みると、現在施工されている「Go To キャンペーン」の影響があったと考えても間違いではないだろう。ただ、既に発生してしまった第3波の責任追及に躍起になるよりも、その状況下でより良い行動をとるように心がける方が、よほど建設的だと考える。
そこで今回は、8月に米トランプ大統領が緊急認可したことで話題となり、日本でも9月に臨床研究開始の報道があった「回復者血漿療法」について取り上げる。回復者血漿療法とは一体どのような治療法であるのか、また臨床研究が先行して進んでいる韓国では何が起きているのか、関連情報を整理した。
回復者血漿療法とは、特定の感染症から回復者から得た血漿という血液中の成分を、重症の患者に投与するという治療法だ。古くは、20世紀初頭のスペイン風邪流行時にも有効性が示されたという報告があった。
感染症から回復した人の血漿成分には、その感染症に対する抗体を有しており、患者に投与することで治療に役立てることができる。これは新型コロナも同様であると考えられ、各国で緊急認可や臨床研究が相次いでいるのだ。
当然、臨床研究などをおこなうには、大量の血漿が必要になる。日本ではまだ臨床研究が始まって間もなく、研究機関の国立国際医療研究センターでの回復者血漿の採取・保存数もそう多くないという。
しかし、韓国では臨床研究が既に進んでおり、今月3日には240Lもの回復者血漿を投入した治療剤の3次生産も始まっているなどの報道があった。韓国の回復者数は約25,000人、一方で日本の新型コロナ回復者数は約101,000人、東京都の回復者数だけでも31,000人を超える。
そもそも抗体をもっている回復者が少ないにもかかわらず、なぜ韓国では臨床研究や治療剤の開発を行うための大量の血漿が入手できるのだろうか。そこには、一つの宗教団体の協力があった。
各国が明確な防疫策を打ちあぐねていた流行初期の2月半ば、新天地イエス教(以下、新天地)の大邱(テグ)教会から多くの感染者が出た。新天地は一人目の信者の感染が発覚した当日に韓国内外の施設での活動を停止したが、既にウイルスは信者らの間に広まってしまった後だった。
その信者らが回復した6月末、新天地は団体での血漿提供の意思を表明した。そして、大韓赤十字と大邱市の協力を得て、実際に血漿提供がおこなわれたのが7月13~17日と、8月27日~9月4日にかけての二度。さらに、今日(11月16日)から三度目の血漿提供もおこなわれているという。
これまでの新天地による団体血漿提供に際して、韓国中央防疫対策本部のクォン・ジュンウク副部長が会見で度重なる感謝を口にしていた。また、今月3日には同氏の会見で、既に述べ2,030人の血漿提供が完了していたことが公表されており、なかには複数回の血漿提供をした方が少なくないそうだ。
更に、今回の団体血漿提供では4,000人余りの協力があることを見込んでいるとも述べられている。
通常の血漿成分献血では、最短2週間の期間をおけば再度提供することができる。しかし、採取した血液から血漿成分だけを取り出し、残りの血液成分は体内に返すため、時間がかかり、血管への負担も大きい。
新型コロナは治療後にも倦怠感などの後遺症を長期間抱える方が多いという報道がある。そのなかでも繰り返し血漿提供している姿勢は、研究者らにとって、また同じく新型コロナに苦しむ患者らにとって、前向きな力になるに違いないだろう。
日本で回復者血漿療法の臨床研究をおこなっているのは、東京都内の国立国際医療研究センターだ。遠方からの移動が憚られる現状があるとはいえ、都内の回復者数は韓国の回復者数よりも多い。もしも身近に新型コロナからの回復者がいるのであれば、感染したことを糾弾するのではなく、回復者の血漿が治療に役立つことを知らせてほしい。
外出自粛要請の無い今、満員電車に乗って通勤せざるを得ない方もいる。不安の矛先を他人に向ける前に、情報の取捨選択をして少しでも落ち着いた行動をしてほしい。コロナ禍から抜け出すには、一人一人の協力が必要なのである。
[記者:鳥羽歩花]
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担当 高草(タカクサ)
そこで今回は、8月に米トランプ大統領が緊急認可したことで話題となり、日本でも9月に臨床研究開始の報道があった「回復者血漿療法」について取り上げる。回復者血漿療法とは一体どのような治療法であるのか、また臨床研究が先行して進んでいる韓国では何が起きているのか、関連情報を整理した。
回復者血漿療法とは、特定の感染症から回復者から得た血漿という血液中の成分を、重症の患者に投与するという治療法だ。古くは、20世紀初頭のスペイン風邪流行時にも有効性が示されたという報告があった。
感染症から回復した人の血漿成分には、その感染症に対する抗体を有しており、患者に投与することで治療に役立てることができる。これは新型コロナも同様であると考えられ、各国で緊急認可や臨床研究が相次いでいるのだ。
当然、臨床研究などをおこなうには、大量の血漿が必要になる。日本ではまだ臨床研究が始まって間もなく、研究機関の国立国際医療研究センターでの回復者血漿の採取・保存数もそう多くないという。
しかし、韓国では臨床研究が既に進んでおり、今月3日には240Lもの回復者血漿を投入した治療剤の3次生産も始まっているなどの報道があった。韓国の回復者数は約25,000人、一方で日本の新型コロナ回復者数は約101,000人、東京都の回復者数だけでも31,000人を超える。
そもそも抗体をもっている回復者が少ないにもかかわらず、なぜ韓国では臨床研究や治療剤の開発を行うための大量の血漿が入手できるのだろうか。そこには、一つの宗教団体の協力があった。
各国が明確な防疫策を打ちあぐねていた流行初期の2月半ば、新天地イエス教(以下、新天地)の大邱(テグ)教会から多くの感染者が出た。新天地は一人目の信者の感染が発覚した当日に韓国内外の施設での活動を停止したが、既にウイルスは信者らの間に広まってしまった後だった。
その信者らが回復した6月末、新天地は団体での血漿提供の意思を表明した。そして、大韓赤十字と大邱市の協力を得て、実際に血漿提供がおこなわれたのが7月13~17日と、8月27日~9月4日にかけての二度。さらに、今日(11月16日)から三度目の血漿提供もおこなわれているという。
これまでの新天地による団体血漿提供に際して、韓国中央防疫対策本部のクォン・ジュンウク副部長が会見で度重なる感謝を口にしていた。また、今月3日には同氏の会見で、既に述べ2,030人の血漿提供が完了していたことが公表されており、なかには複数回の血漿提供をした方が少なくないそうだ。
更に、今回の団体血漿提供では4,000人余りの協力があることを見込んでいるとも述べられている。
通常の血漿成分献血では、最短2週間の期間をおけば再度提供することができる。しかし、採取した血液から血漿成分だけを取り出し、残りの血液成分は体内に返すため、時間がかかり、血管への負担も大きい。
新型コロナは治療後にも倦怠感などの後遺症を長期間抱える方が多いという報道がある。そのなかでも繰り返し血漿提供している姿勢は、研究者らにとって、また同じく新型コロナに苦しむ患者らにとって、前向きな力になるに違いないだろう。
日本で回復者血漿療法の臨床研究をおこなっているのは、東京都内の国立国際医療研究センターだ。遠方からの移動が憚られる現状があるとはいえ、都内の回復者数は韓国の回復者数よりも多い。もしも身近に新型コロナからの回復者がいるのであれば、感染したことを糾弾するのではなく、回復者の血漿が治療に役立つことを知らせてほしい。
外出自粛要請の無い今、満員電車に乗って通勤せざるを得ない方もいる。不安の矛先を他人に向ける前に、情報の取捨選択をして少しでも落ち着いた行動をしてほしい。コロナ禍から抜け出すには、一人一人の協力が必要なのである。
[記者:鳥羽歩花]
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